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180 戦闘準備 / 第181話 180 戦闘準備

第181話 180 戦闘準備

ここから完結まで、6~10話の毎日更新を行います。

最後までお付き合い頂ければ幸いです。


 俺がクォデネンツ調査報告書を提出して一時間も経たない内に、緊急会議が招集された。

 ヒヨリと一緒に王国議会議事堂会議室に急行した俺は、中にズラリと並ぶルーシ王国の偉い人たちの険しい視線に串刺しにされ、扉を閉めて回れ右をした。


 一瞬で胃どころか腹に穴が空いた気がする。

 こんなん殺人未遂だろ。人は苦手だって言ってんだろーが!


「ヒヨリ、会議終わったら議事録まとめて教えてもらえるか?」

「ああ、部屋で待っていろ。時間がかかりそうだが夕食は一緒に食べたい」

「OKメシ作っとく」

「いえ待って、待って下さい大利さん、人払いしますから」


 扉の外でヒヨリに外交委任していると、慌てた女王陛下が会議室から出てきて頼み込んでくる。

 事が事なので軍務省や魔法省、外務省のお偉方を集めたが、一番重要な俺がいなければ話が進まないそうだ。

 じゃあ最初から俺だけ呼んでくれよ。


「悪いな、女王。扱いにくい面倒な男で。説明の二度手間は我慢してくれ」

「とんでもない。すみません大利さん。国賓に不快な思いをさせてしまい申し訳ないです」


 腰の低い女王の謝罪になんだか気まずくなっているうちに、会議室からお偉いさんがゾロゾロ出て行き人がハケた。

 スマンね、いちいちテンポ悪くて。でも俺にとっては大事だから。


 本来は十数人が集まるはずの会議室に三人で入り、テーブルを囲んで資料を前に緊急会議が始まる。


「クォデネンツは魔王の完全体、魔神を製造していると書かれていますが。どういう事ですか」

「書いてある通りですね。書いてある事をわざわざ聞くのやめてもらえます?」


 いちいち口頭で説明しなくてもいいように報告書に書き起こしているのに、それを聞くのは無意味だ。

 ちゃんと読め。ちゃんと書いてあるんだから。

 正論を言っただけなのに女王は怯み、ヒヨリは目を吊り上げた。


「バカ。書き漏らしとか補足情報を含めて聞きたいんだよ。突っかかるな」

「あ、そういう事? すみませんねコミュニケーションエラー多くて」

「いえ、私も聞き方が悪かったですから。つまり……これは事実なのですか? それとも推論ですか? まずはそこを明確にしたい」


 会話苦手マンでも分かるようにわかりやすく言い直してくれた質問に答える形で、俺は俺が知り得た情報の全てを女王陛下に伝えていった。


 クォデネンツが魔神を製造しているのは確実だ。事実と断定して構わない。

 それは俺が技術者として、職人として保証できる。


 魔神は何も今日明日に完成するわけではない。が、時間は敵だ。製造速度は次第にペースアップしている。

 クォデネンツの魔神製造速度は指数関数的で、時間が経てば経つほど加速する。それはコアの変形変色や発生する地震頻度と震度を記録し続けていた研究員たちのデータとも合致する。


 魔神の完成度は現状で約60%。

 完成まであと1年はかかる見込みだが、鎧無し未完成で暴れ散らしていた魔王の前例がある以上、完成するまで大人しくしていると信じるのは危険だ。完成予想時期もどこまで信頼できるか分からない。もっと早まるかも知れない。

 完成したら確実に動き出すし、完成しなくても何かの切っ掛けがあれば恐らく動き出す。

 天災のようなものだ。いつ来るかは分からない、しかしそれは近いうちに確実にやってくる。


 そもそも、魔神はきっともっと早くに完成するはずだった。

 なぜなら耐圧核の魔法金属生産ペースを鎧生産ペースが上回っているから。

 つまり、材料不足で鎧の生産が滞っているのだ。

 材料供給量がヘボ過ぎる。バランスが取れていない。


 クォデネンツの執念深い防御隠蔽調査妨害機能を鑑みるに、クォデネンツの設計者がこんな初歩的な設計ミスをするわけがない。

 クォデネンツは本来発揮されるはずの機能が発揮されていないと考えるのが妥当だ。


 魔法文明世界には魔法金属がありふれていたとされている。

 地球に銅や鉄が溢れているように、魔法文明にも魔法金属が溢れていた。どこにでもあった。

 地球には、魔法文明視点で「あって当然」な魔法金属が無い。本来は周辺の土壌や地層から魔法金属を集めて鎧を製造するはずだったのではないだろうか? そうだったと仮定すれば、材料製造と鎧製造の不均衡に説明がつく。

 材料さえ十分にあったなら、クォデネンツは地球に飛来して一年もしない内に魔神を完成させていただろう。


「……クォデネンツの魔神製造機能と、結界機能は切り離せますか?」


 ザッと話すと、女王陛下は口に手を当て難しい顔で聞いた。

 もちろん、俺は頷く。


「理論上は」

「理論上は、とは?」

「時間が無いです。俺があと十人いても余裕で十年かかります。手応え的には。機能分離が終わる前にフルスペック魔神が何十体か生まれるんじゃないですかね? 複数体製造されるか分かんないですけど」

「真面目にお願いします。私は真剣に聞いているんです。国家存亡の危機なのですよ?」


 柔らかな陛下の口調に険が混じり、圧が漏れ出す。

 ひーっ! お、落ち着いて! 陛下が祖国大好き愛国者なのは知ってます。決してルーシ王国を軽んじているわけでは。


「いやあの、別に国が滅びる心配はいらないんじゃないですかね。だって青の魔女がいるんですよ?」


 俺の杖を持った俺の彼女は世界最強なのだ。

 人質を取られれば人質ごとぶっ殺し。

 四次元に追放されても自力で帰還し大暴れ。

 強いし容赦ないし不測の事態にも動じない。

 さらに魔王を倒した実績持ち。

 いくら魔神が魔王より強いとはいえ、ヒヨリだって魔王討伐時より強くなっている。

 魔神だってボコボコのボコですよ。


 魔神誕生はヤバい。

 だが、もう終わりだと絶望するほどの物でもない。


 そう思って気楽に言ったのだが、二人の古魔女は深刻そのものの面持ちで視線を交わした。

 えっ?

 何? もしかして俺が思ってるよりヤバい?


「私は魔王と戦った事がありません。ですが、この想定スペックは……」

「魔神は魔王が持っている能力は全て持っているんだな?」


 陛下が資料を睨みつけ、ヒヨリも声を低くする。


「誤解がある。そこに書いてあるのは最低スペックだ」

「最悪だ。高知能、物理攻撃完全無効、魔法耐性、底なしの魔力、自己再生、吸収、魔物使役、時間操作、巨体と敏捷性、四次元能力、全身装甲……」


 指折り数えたヒヨリは、指が足りなくなって天井を仰いだ。


「加減を知らない中学生が考えた最強兵器だよ、これは。勝ち筋が分からない」

「まさかヒヨリより強いなんて事はないよな……?」


 恐る恐る尋ねると、ヒヨリは躊躇いがちに答えた。


「私より強いな。勝てない」


 ウッソだろ、おい。

 信じ難い。

 甲1類をワンパンできるヒヨリが?

 あの化け物魔法使い、入間を二度も倒した青の魔女が?

 この世に青の魔女が勝てない相手がいるんですか!?


「魔王はルーシェが転ばせて、グレンがコアを露出させて、私が動きを止めて、コンラッドが飛び込んで内側から一気に斬り裂いて倒した。女王銅の装甲があったら攻撃が通らなくなる……そうか、魔王がバランスを崩しやすかったのは外骨格装甲が無かったからなのか?」

「待て待てヒヨリが負けるのは解釈不一致にもほどがある。いや負けるのが悪いとかじゃなくて、ヒヨリは凄く凄いんだ。負けるとしたら武装の問題じゃないか? キュアノスが性能一万倍になったら?」

「そりゃあ、勝てるが……」

「じゃあヒヨリが勝てないとしたら、それは杖を作る俺の責任だ。ヒヨリは強い。最強だ。自信持て!」


 太鼓判を押すと、ヒヨリは愛おしそうに俺に微笑みかけてきた。

 な、なんだよその微笑みは。可愛いのは分かるが理由が分からん。

 今のは「ウオオオ勝つぞ勝つぞ!」って発奮する流れでは?


 困惑していると、今度は資料のページを捲っていた女王陛下が眉根を寄せ紙に目を落としたまま聞いてくる。


「魔神は排除が必要です。一方で、結界機能の維持も必要です。本当にどうにもならないのですか? 機能の切り離しは無理でも、部分的破壊とか、停止とか、製造工程を逆再生させるとか?」

「全部無理ですね。百年ぐらいあればできますが」

「魔神だけ四次元に追放するとか、巨大なマモノバサミに閉じ込めて問題を先送りにするとか」

「だから無理ですって。お言葉ですがね、陛下が考え付く程度の事は全部考えました。無理です。根本的に」


 俺が調査のためにやったクォデネンツへの干渉は、影響が軽微だからクォデネンツも過剰反応を起こしていない。後ろから忍び寄って髪の毛を一本切るようなものだ。

 陛下が言うような機能の切り離しだの停止だのは、真正面からドタドタ走り寄ってナイフで刺そうとするようなもの。

 刺せないし、間違いなくエグい反撃が飛んでくる。悪手だ。


「技術的な問題解決は無理だと思って下さい。魔神が完成する前に、早急に一切合切まとめて破壊してしまう事をお勧めします。暴力の出番です」


 正直、このまま壊さずバラバラに分解したい。

 魔法文明驚異の超技術の塊を余すところなく調べ上げたい。

 だが、悠長に調べていたら魔神がフルスペックで生まれ落ちてしまう。ヒヨリが弱腰になるようなバケモンを解き放ったら世界が終わる。

 まだ未完成なうちに、少しでも脅威度が低いうちに、どうにかしてクォデネンツごと未完成魔神をブッ壊すしかない。

 俺は壊れた部品をかき集めて調べるだけで満足するからさ。


 女王は長々と考え込んだ。

 資料を隅から隅まで読み返し、まだ抜け道を探そうと苦しそうに聞いてくる。


「オクタメテオライトにもクォデネンツに似た結界機能があるのでしょう? せめてそれを模倣した防衛機構を作れませんか」

「いや、マジで原理分かんないです。無理ですね」


 結界を張る魔石なんて他に聞いた事が無い。比較検証もできない。

 何を聞かれても「無理」ばかりでスマン。

 でも無理な物は無理なのだ。俺にだってできない事はある。

 むしろ半年ちょいでクォデネンツの異常原因を突き止めた事を褒めて欲しい。

 魔法文明と地球文明の技術格差はそれほど大きい。


「仮に魔神を倒せても、それで結界が失われたら。私一人では祖国を守り切れない。そもそも魔神に負けたら……私は私を信用できない……」

「まずは魔神を倒す事に集中したらどうだ? 魔神を倒せないなら結界消失問題を考える意味もないだろう」


 ヒヨリの提案に、女王は弱々しい目を向けた。

 女王の新雪のような白い髪が、急に年老いた老婆の白髪(しらが)のように見えた。

 だいぶメンタルやられてらっしゃる。

 そうだよな。女王は、ルーシ王国はこの90年ずーっとクォデネンツに頼ってきたんだ。それが敵に回るショックは計り知れない。

 俺に例えればヒヨリが敵に回るようなもの。ありえん。絶望だ。


 女王のお気持ちを推察して自分で自分のデリカシーパワー上昇に感心していると、ヒヨリは優しく言った。


「大丈夫だ、クォデネンツが無くてもやっていけるさ。あのトゥルハンですら、90年ずっと国を治めている。国土が荒れても民は守ったし、復興しつつある。あの男にできてお前にできないはずがない」

「…………そう、ですね。少し気が楽になりました」


 空元気気味に女王が笑い、場の空気がちょっと和んだ。

 トゥルハン可哀そう。人の悪口言って打ち解けるのは女子の悪いところだぞ! 悪口言うのは入間だけにしておけ。


 気を取り直した女王はなんとか抜け道を探し結界機能を維持しようとするのをやめ、クォデネンツ破壊に舵を切った。

 こうやってグダグダしている間にも、魔神は刻一刻と完成に近づいているのだ。

 今でさえ勝てそうも無いのに、今以上にヤバくなったらいよいよヤバい。


 そして対魔神、対クォデネンツの戦闘計画が立てられ始めた。







 かつてアメリカは魔王打倒のために世界を巡って戦力を集めた。

 武器を揃え、一丸となって戦った。

 今回やる事も概ね同じだ。


 時間の貴重さを重く見た女王は魔神およびクォデネンツの破壊を十日後に設定。

 それまでに可能な限りの準備を行う事が決定された。


 まず何よりも早く布告実施されたのは国民の避難だ。

 勝っても負けても国土は荒れる。一般人を置いてはおけない。

 女王の鶴の一声で、国民たちは持てるだけの家財を荷車や馬車に積み込み隣国のトルコへ出発した。


 トルコはルーシより温暖で、仮設住宅建設も進んでいる。これから深まる冬の厳しさもなんとか凌げるだろう。

 トゥルハン王もルーシの女王に懇切丁寧に頼まれ、機嫌よく民の保護を約束したらしい。無論避難民受け入れはタダではなく、首尾よく魔神を倒した後の戦利品を分け前として要求してきたが。安い物だ。取らぬ狸の皮算用にならない事を祈りたい。


 戦力としては世界中から超越者が招集された。

 魔獣は操られ敵に回る可能性があるし、魔人はクォデネンツ結界で塵になるだろう。

 魔神と勝負の土俵に立てるのは超越者のみ。


 まずルーシ王国女王陛下の参戦は確定。

 ヒヨリを上回る超魔力と多種多様な詠唱魔法、無詠唱魔法、豊富な戦闘経験で主戦力の一人になる。


 青の魔女も参戦する。

 魔神が解き放たれれば殺される。身内も友人も多くが犠牲になるだろう。見過ごせない。

 魔王戦の経験は魔神戦でもきっと活きる。


 ヒヨリの知り合いにも声がかけられた。

 魔王殺しの英雄コンラッド・ウィリアムズは二つ返事で参戦。

 キューバの「死神ゲデ」は誰か知らんが強いらしい。青の魔女への借りを返すため参戦。

 蜘蛛の魔女さんは招集に快諾してくれたが、戦闘力の面で不安があるため後方支援に徹する。

 他にも数人ヒヨリの知り合いが支援役として参陣してくれる。


 なお地獄の魔女はどこか辺境を彷徨っているようで、連絡が取れなかった。

 他に魔神の存在に懐疑的だったり、要請を無視したりして、来てくれなかった超越者は多い。

 まあしゃーない。「十日後に命懸けで戦ってくれ」と頼まれてポンとOKする奴はあんまりいないだろう。


 女王の要請で来てくれる事になった超越者もいる。

 竜の魔女はルーシ王国国宝のティアラ譲渡を条件に参戦を了承。

 二代目聖女はルーシ王国の世界保健機関加盟と引き換えに参戦。

 聖女が来るので、聖女を慕う豪腕の魔法使いもセットで来る。


 トゥルハン王は不参加だ。

 図体がやたらデカくて魔神と取っ組み合いが出来そうに見えるが、占術魔法の使い手であり、あんまり戦闘向きではないらしい。まあね、為政者がバリバリ前線で戦えるのちょっと変だもんな。

 魔神に勝っても守るべき民が消えてはなんの意味も無い、というのは女王とヒヨリの共通見解で、デッカいおっさんは非戦闘員保護に注力する事になる。


 招集された超越者たちはクォデネンツを中心に殺し間(キルゾーン)構築に勤しんでいて、あれこれ作戦を練ったり魔法をかけたり魔法陣を敷設したりしている。

 超火力の初撃で一気にクォデネンツごと魔神を消し飛ばせれば、それが一番いい。

 そんなに甘い相手ではなかろうが、大ダメージを与えたところから戦闘開始できれば戦況はグッと楽になる。


 俺はというと、急ピッチで魔法杖のバージョンアップを進めている。


 まずは竜炉彫七層型青魔杖キュアノスを強化。

 コア内部を四次元工法処理し、十二層彫にして魔法増幅率を跳ね上げた。

 常人が扱えば射撃魔法(ア゛―)の反動だけで死ねるぐらい反動がドギツくなったが、これによって計算上は魔神の魔法金属装甲にも通用する出力が確保できる。


 そのままでは反動でヒヨリが死んでしまうため、更に専用チューニングを施す。

 逆流防止機構を通してもなお荒れ狂う反動魔力に、クォデネンツ研究室の入口認証システムにも使われていた魔力識別機構を改造して作った魔力濾過適合機構を噛ませるのだ。

 有害な反動魔力を濾過してヒヨリが生来持っている魔力の性質に近づけてやる事で、反動を和らげる。

 ロング・グローブ型の魔力濾過適合機構には腕を保護固定する役割もあり、杖を握る腕から逆流する魔力で腕部が断裂爆散するのを防ぐ。


 威力的には大魔法の暴走を無理やり抑え込んで扱おうとしているようなものだ。

 無茶にもほどがある。

 だが、ここまでしなければ魔神には到底勝てない。

 ヒヨリは鎮痛薬やら竜薬(ドラキシル)やらを服用し、痛みと凍傷に耐えながら戦う事になる。俺にできるのは少しでもヒヨリが楽になるよう、性能と低反動を両立させる事だけだ。


 威力と反動の問題の他にもう一つ重要なのは、防壁中和だ。


 クォデネンツのコアは次元歪曲防壁を展開している。この防壁がある限り、どれほど高威力の魔法で攻撃しても一切通じない。

 最悪の想定はしておいた方がいい。魔神がクォデネンツと同種の防壁を展開していた場合、威力に関係なくどんな魔法も届かない。

 攻撃魔法に干渉器グレムリンと同じ防壁中和機能を付与しなければならない。


 三徹して目を真っ赤に充血させ演算に没頭した数学チームによって「正七面体があれば魔法への防壁中和を付与可能」と分かったものの、そんな物は存在しない。

 ねぇよ、正七面体なんて。作図不可能だ。作れない。


 数学チーム曰く「正七面体が実在しなければクォデネンツの挙動に説明がつかないから存在する」という話なのだが、どれだけ理屈を聞いてもチンプンカンプンで意味不明だったので、シラッシの多面体を利用して劣化再現した。

 シラッシの多面体型に削り出したグレムリンに高圧処理と減圧処理を繰り返してβグレムリンに変える。で、多面体の穴に干渉器グレムリンの端を通してリンクさせれば機能する。

 見た目的には宝石でできたチャームアクセサリと言った感じで、展開される力場範囲内にコアが収まるよう、コア付近にぶら下げる形で装着するのがいいだろう。


 次元防壁貫通チャームを併用すると、魔法の魔力消費量は倍増する。

 継戦能力ガタ落ちだ。

 しかしこれ以上は技術的にどうしようもない。この性能で納得してもらいたい。

 未完成の魔神が次元歪曲防壁を展開しなかった場合、チャームの出番は無い。それでも作っておかないと「詰み」になりかねないので、俺は作戦に参加する超越者たち全員分の次元防壁貫通チャームを作成配布した。


 なお、勇者コンラッドはチャームを受け取りこそしたが使わないかも知れないという話だった。


 なんかね、勇者様は剣技でなんとかなるらしいんだよね。

 彼は最近次元を斬れるようになったらしい。


 ちょっとよく分かんないです。ファンタジーバトル系漫画にお住まいの方ですか?

 四次元技術に着想を得て、魔剣の魔法使いの剣技と剣聖の剣技を融合昇華したとか言ってたけど。

 それで説明し終わった雰囲気出すのやめて欲しい。


 でも魔法も唱えずただの鉄の剣で幽霊魔物斬り殺すの見せられたら納得するしかない。

 いけそう……ですね。

 なんでいけるのか理屈がサッパリ分からんが。

 勇者コンラッド様は剣術スキルツリーをワケ分からん伸ばし方していらっしゃる。こわい。


 ともあれ準備は整った。


 超越者を集め。

 作戦を立て。

 武装強化して。


 あとは魔神と、それを製造しているクォデネンツを破壊するのみ。

 こうして俺達が準備を整えている間、クォデネンツもまた魔神誕生準備を進めている。

 悠長にしている余裕はない。女王のGOサインも出た。


 かくして2113年11月25日、正午。

 魔神-クォデネンツ破壊作戦が幕を開ける。

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